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設置される。ここで本論文では図示してないが、引船方式の場合の実験結果と比較すると、引船方式においては特に短周期波中で波漂流力の影響を受けてケーソンが波下側に漂流する結果となった。一方、アンカーワイヤ方式では、ケーソンが4方向に展張されたワイヤによって拘束されるので引船方式と比べ漂流量は小さくなり、ケーソンの重心点は既設ケーソンのほぼ中心法線上を推移しているつまり、アンカーワイヤ方式は引船方式よりも安定してケーソンの据付作業を行うことができる。
5−2. ケーソンの動揺の時刻歴
Fig.9およびFig.10はケーソンの動揺(サージ、スウェイ、ヒーブ)の時刻歴を示す。図の縦軸はFig.6で示した絶対座標系における動揺量を表し、横軸は実験開始から終了までの経過時間を表している。
Fig.10に示した長周期波中(T1/3 = 1.90s(12.0s))ではスウェイとヒーブが大きくなっているが、引船方式のときと同様に、ヒーブは注水が進むにしたがって小さくなり最後にはおおむね一定値になる。これはケーソンとマウンド間のクリアランスがほぼゼロになったことを意味する。このときスウェイが一定値にならないのは、波浪によりケーソンが滑動しているからであり、滑動に抵抗するに十分な重量がケーソンにないことが原因である。本実験では注水速度を一定としているが、実際の据付工事においてはケーソンの着底前に注水速度を上げるため、この注水状況を実験において再現すれば滑動量を低減できるものと考えられる。
5−3. ケーソンの設置誤差
実験では各ケースの終了後、ケーソンの設置誤差をスケールで計測した。Table3は不規則波中実験終了後のアンカーワイヤ方式におけるケーソンの設置誤差を示すこの表はX方向の設置誤差(サージ方向のずれ)、Y方向の設置誤差(スウェイ方向のずれ)を示している。実験は少なくとも2回、同じ波浪条件で実施しているが、ここではそのうちの1回の結果についてのみ示す。この表から、有義波高、有義波周期とケーソンの設置誤差との間に明確な関係が見られないことがわかる。直感的に設置誤差が大きくなると考えられる有義波高が大きい場合、また有義波周期が長周期の場合でも設置誤差が小さいこともある。現在のケーソンの据付作業では、設置誤差の許容範囲は約0.2〜0.5mであり、模型スケールに換算すると0.5〜1.25?となる。よって、アンカーワイヤ方式によるケーソンの自動設置システムにおいては、実験した範囲のすべての波浪条件に対してケーソンを目標位置に設置可能であることが確認できた。本論文では示してないが、引船方式の場合のケーソンの設置誤差は、高波高あるいは長周期波の場合に設置誤差が大きくなる傾向にあり、しばしば設置誤差が許容限界値を超えることもあった。このことから、アンカーワイヤ方式は引船方式に比較して、より精度良くケーソンを設置できるといえる。

Table 3 Installation errors in irregular waves

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6. おわりに
本研究では防波堤ケーソンを自動的に据付けることができるケーソン自動設置システムを開発した。本自動設置システムは引船方式、アンカーワイヤ方式の2方式でケーソンの据付作業を行うことが可能である。本論文ではこれら2方式のうち、アンカーワイヤ方式による自動設置システムの有効性を水理模型実験により検証した。今後は、本自動設置システムの実用化に向けて、現地実証実験による検証を行いたいと考えている。
また、本自動設置システムを開発するにあたっては、社団法人日本埋立浚渫協会に設置された『海洋構造物自動設置システム開発調査委員会』の各委員の方々から数多くの貴重な御助言を頂いた。ここに記することにより、深甚なる感謝の意を表する次第である
参考文献
1)Shiraishi,S., H.Yoneyama, H.Matsui, S.Ueda and Y.Okayama : Experimental Study for Automatic Installation System of Offshore Structures, Proc. of International Workshop on Floating Structures in Coastal Zone, PHRI, 1994.10, pp.430〜 441
2)米山治男、白石悟、名里健吾、上田茂、松井創、岡山義邦、高橋英俊:引き船方式による防波堤ケーソンの自動設置システムの開発および水理模型実験による評価、第13回海洋工学シンポジウム、日本造船学会、1995.7,pp.459〜466
3)白石悟。米山治男、高橋英俊:防波堤ケーソンの自動設置システム、土木施工、山海堂、第36巻第10号、1995.9,PP.77〜82
4)Shiraishi,S., H.Yoneyama, K.Nazato, S.Ueda and H.Takahashi: Experimental Study for Automatic Installation System of Offshore Structures, Proc. of 20th Joint Meeting UJNR Marine Facilities Panel, 1995.9, pp.210〜217
5)Yoneyama,H., S.Shiraishi, K.Nazato, S.Ueda and H.Takahashi: Experimental Study on Automatic Installation System of Offshore Breakwaters, Proc. of the 6th International Offshore and Polar Engineering Conference, ISOPE, 1996.5, pp.523〜530

 

 

 

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